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それでも想いがとまらない

stage 1/ それでも想いがとまらない

目の前にいる女子高生は、確かに自分が惚れているオンナだった。


「ルカ、」
「うん、紹介するね。彼女は、」
「佐倉蜜柑です」
親友が紹介するより早く、積極的に自己紹介する。
「佐倉、彼は、」
「日向 棗くんやろ?」
「知ってたの?」
「だって、日向くんはウチの高校でも有名人やし」
「それもそうだね」
ルカが納得したように笑う。
「よろしくな」
「・・・よろしく」

佐倉蜜柑。
フルネームで聞くのは初めてだ。

屈託なく笑いかけてくる少女は、親友の彼女だった。
胸に込み上げる、失望感。

運命とは、時に非情なものだ。



「やった、ルカぴょん、連続ストライクや」
隣で彼女が手をたたき、喜んでいる。

ここは市内のボーリング場。3人で遊びに来ている。
ルカは彼女を紹介してからというもの、何かと誘いをかけてくるようになっていた。
二人で出かければいいものを、何の義理立てか知らないが、今日で5回目の付き合いである。
これでも3回に一度は断っていたのだが、ダメ押しされて連れて来られる始末だ。それほどヒマな訳ではないし、いくら好きな女に逢えるからといって、この状況では心弾むところか拷問に近い。


「ルカぴょん、すごいわあ。さすがやわ」
親友が戻ってきて、彼女に笑いかける。
「棗ほどじゃないって」
「でもたいしたもんやわ。うちなんか、全然だめや」
「そんなことないって。佐倉だって、頑張ってるじゃないか。楽しくやればいいんだし、大丈夫だよ」
「ルカぴょんは優しいな。だから大好きや」
「佐倉、」ルカが照れている。
「・・・・・」

万事、この調子なのである。
自分は何のためにここにいるのか。
理解に苦しむ。
内心でうんざりしながらも、嫉妬にも似た感情が、自身の中で酷く疼いていることを自覚していた。

なぜ、このオンナなんだ。
なぜ、彼女でなけらばならないんだ。
何度も自分に問いかける。

だが好きになったきっかけなど、思い出すだけでも馬鹿馬鹿しいくらい単純だった。

あれは、半年前――――。

あの日は、雨がひどく降っていた。






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